映画のこと

 ためしに最近思い出した映画とかの話をするだけ。

震える舌

 新型コロナには感染したくないけれども、日常生活は普段から危険だと感じることは多々あります。「震える舌」を観てから数日は「ゼッッッタイに怪我したくねェ!!!!!」と普段の倍は身の回りの物事に慎重になった。映画の内容は3人家族の一人娘が破傷風にかかるストーリーで、とにかく重い、しんどいが積み重なる。

 どれだけ物事に慎重になっても、病気になる時はサラッとなってしまうものだから人間って思ってたよりも脆いなと近年で考えるようになった。そのことの関係でいけば、最新作「ミッドサマー」監督のアリ・アスターは「肉体はいつか無条件で僕たちを裏切る」といかにもな名言を来日時のインタビューで語っていた。「震える舌」は内容自体は病気にかかった娘と両親の闘病生活がメインになっているが、観ていてホラー的な要素を彷彿とさせる要素がいくつかあります。とある物事についての不安や恐怖心から派生してやってくるホラー映画は多く語られてきましたが、「震える舌」もその筋でいくならばやはりホラー映画に限りなく近い作品なのかもしれないと改めて考えてました。

 

「ファーストマン」

 どこかで配信がスタートしたとかで観た。「ファーストマン」は人類で初めて月面着陸に成功した人物ニール・アームストロングについての物語で、この作品のポイントはアームストロングについての個人的な物語の範疇にあり続けているところだと思ってます。幼い間に他界してしまった娘について、自身の仕事、「月へ行く」ということについて、危険と隣り合わせの現場、いつ死んでもおかしくないし周りの同僚は死んでいくそんなことを英雄譚として描き出すのではなくアームストロング一人の人間としての内面について徹底して描写されている作品。

 宇宙船内の映像がほとんど内からの映像で、外観が出てくるシーンは限られている。宇宙船内は狭いし暗く、視界も限られています。外を確認できる窓はかなり小さい。おまけに機体が軋む音や素人目にみてもわかる「これ大丈夫なの?」と思わせるところがあったり、「こうなるとヤバい」というシーンがあらかじめ登場するなど「月へ行く」という工程の危険さの表現がかなり効いていて、観ている間に何度か手に汗を握り、不安で怖くてという「映画だなぁ」という感じの場面がありつつも、全体的にこの映画は静かでアームストロングの持つ寡黙さと共にあり続けている。

 アームストロングを取り巻く環境の中に「いつ死んでもおかしくない」というのはポイントの1つで、いつだって死が近くにある。この映画内に何度も映る狭く暗いコックピットを持っている宇宙船はまるで棺桶のようだなと観ていて感じるところがいくつもありました。意図しているよね?

 実際に当時公開中に映画館へ観に行った後、映画館を出ればあたりは暗くなっていて、雲のない真っ黒な空の中に明るく輝く月の姿があった。あんな所まで実際に行った人物がいるという現実についてと、月を見る感情が以前とは違うものになったと思う。

自分の周りではあまり話題になっている気配は全くしなかったけれども今作は監督前作のLA LA LANDとは変わってかなり静かでトーンの効いた作品ではありつつも、しっかり良作だと思ってます。

 

 

「パラサイト/半地下の家族」

 上映が開始されてからそこそこ早いうちに行った記憶がある。まだ上映していた(?している?)所があるからかどうかは分からないけれども、そういえばなかなかソフト化の話聞かないなぁと考えていました。海外ソフトのスチールブック良いデザインだったね。

当時は「すごい物を観た!」と度肝を抜かれるってたぶんこういうことを指すのかなとか呑気に考えていました。隙の無いテンポと緩急の効いた抑揚があり、若干のコメディ色が見える映画作品で確かに中盤からのストーリー展開については観ている間に館内の空気がどよめいた感じがしました。(ほぼ満席状態だった) ある時点まではポンポンとうまく進む物事を気持ちの良い調子で見せて「この映画、こうやって見るんだよ」って言われてる感じでリードされてるんだって観終わってからハッとしました。蹴り落とすとこで笑ってる人いたのってそういう流れに乗せられてて、そこでふふって笑った後に事が大きくなってしまった事にハッとするというか…。

 ただ、一旦全てを通して観た後に「確かに自分は面白い映画だとは思ったし、多くの人がこれは傑作だと言うだろうけれども自分たちはどこを「面白い」と思ったんだろう?」と考えるようになりました。題材としてあるのは「格差」が主にあるのは明白ですが、フィクションの話だろうと実際に本編中に登場するような半地下の家庭は存在するし、それを映画という娯楽作品に持ち込まれてあのような映画ができたことについての考えを少しでも持っておくべきでは…?となりました。別に映画の見方はそれぞれだし、「こう観るべきだろ」とか強要する気はありません。ただ、観る人の考え方とバックグラウンドが試されているような映画だなと感じました。面白がれない人がいる可能性というのは他の映画についても当てはまりますが、そんなことを考えさせられた映画でした。                                             

 

・2021年5月16日に少しだけ足したり編集しました。